<W解説>韓国の処理水視察団が帰国=韓国国民の懸念は今後、払拭されるか?(画像提供:wowkorea)
<W解説>韓国の処理水視察団が帰国=韓国国民の懸念は今後、払拭されるか?(画像提供:wowkorea)
東京電力福島第1原発で計画されている処理水の海洋放出をめぐり、現地を訪れた韓国政府の視察団が今月26日、全ての日程を終え帰国した。視察団の団長を務めた原子力安全委員会のユ・グクヒ委員長はインチョン(仁川)国際空港到着後、記者団に対し「現場で確認しなければならないことを一つ一つ確認した」と述べた。視察団は今後、日本側に要請した追加資料の分析などを経て最終的評価を下し、公表することにしている。ただ、今回の視察では試料採取が認められなかったことなどから、視察の実効性を疑問視する声も出ている。海洋放出には韓国内で依然、根強い反発がある中、今回の視察が韓国国民の懸念払しょくにつながるか注目される

福島第1原発の処理水の海洋放出計画をめぐっては、日本政府が2021年4月、放出の方針を閣議決定した。韓国政府は当時「日本政府からの事前協議がなく、日本側が一方的に決定したもので遺憾だ」と批判した。また、ほとんどの韓国メディアは日本政府の方針を批判的に報道。関連する記事ではこれまで一貫して処理水を「汚染水」と表現している。漁業関連団体からも激しい反発が起きた。日本産の海産物に不安が高まり、韓国産と偽って流通させていたとして韓国の水産業者が摘発されたこともあった。昨年9月のIAEA(国際原子力機関)年次総会では韓国の代表が演説し、「原発事故で発生した汚染水が海に放出される史上初のことになる」と述べて懸念を示し、科学的に安全な方法で行うことなどを求めた。日本政府と東京電力は安全性を繰り返し強調しているが、韓国政府は処理水の海洋放出について「科学的で客観的な根拠に従い、合理的に、透明性を持って行わなければならない」としている。

また、韓国では福島第1原発事故を受け2011年9月から、福島・宮城・岩手など、8県産の水産物の輸入を禁止している。

一方、韓国海洋技術科学院と韓国原子力研究院の共同研究チームは今年2月、南部のチェジュ(済州)島で開催された韓国防災学会の学術大会で、海洋放出された処理水がどう拡散するかのシミュレーション結果を発表。海洋放出された場合も大きな影響はないとする結論を導き出した。しかし、韓国ではこの結果を持ってしても、依然、懸念の声は強く、市民団体は「日本政府の主張を鵜呑みにしたものだ」と結果を疑問視した。

今月7日に開かれた日韓首脳会談で、岸田文雄首相とユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は、韓国の専門家らによる視察団を日本に派遣し、現地を視察させることで合意した。

視察団は原発や放射線の専門家ら計21人で構成。21日に訪日、23~24日に福島第1原発を訪れた。処理水を薄める設備や海への放出に使う設備、それに処理水に含まれる放射性物質を分析する施設などを確認したという。25日には経済産業省や原子力規制委員会の担当者らと総括会合を開いた。会合は7時間以上に及び、処理水の海洋放出計画を審査する原子力規制委員会との質疑応答では、委員会が行っている県債や関連資料の共有を要請した。

視察団は6日間の日程を終え、帰国した。視察団の団長を務めた前出のユ原子力安全委員長は仁川国際空港で記者団の取材に応じ、「2021年8月から韓国原子力安全技術院の専門家が検討してきた内容をもとに現場で確認しなければならないことを一つ一つ確認した」とし、「現場で見るものは見て、資料として要求するものは要求した」と話した。その上でユ氏は「今回の視察は21年8月から検討してきた過程の一つであり、終わりではない。受け取った資料、要請した資料、質疑応答で確認したことなどを分析し、最終的に総合評価する」と述べた。

一方、視察団を受け入れた東電福島第1廃炉推進カンパニーの小野明最高責任者は25日の定例会見で「韓国内の理解につながるよう真摯(しんし)に対応した。視察団から質問などがあれば、引き続き丁寧に対応していく」と話した。

処理水の海洋放出についてはIAEAも「問題なし」と結論づけており、日本政府は今夏にも放出に踏み切る計画。今回の視察を機に、韓国側の理解醸成につなげたいところだが、簡単ではなさそうだ。

韓国の世論調査会社4社が共同で行った調査結果では、安全性を検証するのに視察団派遣が「役に立たない」とする回答は53%に上った。

最大野党「共に民主党」は26日、処理水の海洋放出反対を求める署名活動を開始。イ・ジェミョン(李在明)代表は「国民の食卓が脅かされ、韓国の海が汚染されるのが明らかなのに、なぜ反対と言えないのか」と尹政権を批判した。

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