(画像提供:wowkorea)
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韓国はムン・ジェイン(文在寅)政権の発足以来、政権に対する不支持の理由は終始ほぼ「不動産政策・不動産問題」であった。昨年半ばの世論調査だと、不支持の理由の25%が不動産政策・不動産問題だった。

 日本への主権免除を無視した判決等による外交問題や、北朝鮮・中国との関係を巡って米国との外交問題。東北アジアの安全と繁栄がかかっている日米韓の大きな問題である。この問題による文政権への不支持はどれぐらいなのか?問題山積である筈のこの外交問題を不支持の理由に挙げたのは1%にも満たなかったことにはびっくりだ。

 韓国の不動産問題とは主として不動産、就中、マンション価格の高騰であるのに対して、不動産政策に対する不支持とは、文政権の不動産政策が終始一貫して価格統制と需要抑制に重点を置き、供給を度外視したものであったからだ。

 言い換えれば、マンションの購入や所有を諦めて賃貸住宅に居住し、またソウルを始めとした大都市とその中心部ではなくその郊外や不人気地域に居住せよと言うものであった。

 従って(1)不動産所有者(特に複数所有者)への税金引き上げを嚆矢として、(2)住宅ローン規制による頭金の引き上げ、また不動産需要の高い地域(特に駅周辺地域や優良な進学校・進学塾密集地域)における (3)住宅ローン抑制、(4)再開発の禁止・規制強化、(5)建蔽率・容積率の厳格化・規制強化、(6)開発制限区域(グリーンベルト)の維持・規制強化等を骨子とした不動産政策を先日まで24回も実施して来た。

 日本でも、韓国でも、中等教育の社会科の授業では需要と供給の曲線を用いて価格形成のメカニズムを習う。経済学で博士号を取得した者を含む彼らが、需要を満たす供給が有れば自然と価格は適正なものに落ち着くという理論を知らなかったとは考えづらい。

 では何故、文大統領を始めとした不動産政策関連の韓国政府高官らは、この間終始、不動産(マンション)価格の高騰に対して、その供給拡大を持って対応しようとして来なかったのか。どうも文在寅大統領自身は日本のバブル崩壊とその後の「失われた20年」と称される長期間の景気低迷・デフレーションの原因を、次のように診断しているようだ。

(1)投機勢力による不動産価格の急速な高騰(不当な価格引き上げ)の後遺症として極端で急速な価格下落を招き、
(2)また(長期的には人口が減少していくにも拘らず、主に住宅を)供給拡大し過ぎてしまった結果、長期間の不動産価格の低迷を招き、
(3)金融機関の財務状態の悪化をもたらした。

 以上のように認識していると言う。従って文在寅大統領の認識では、人口減少の趨勢を鑑みれば長期的には不動産の供給過剰になる(そして不動産価格の急落と崩壊が日本同様の長期の景気低迷・デフレーションを招きかねない)のが明らかなのにも拘らず、1997年の韓国外貨危機と2008年のリーマンショックを除けば終始不動産価格が高騰して来たのは、不当に利益をむさぼる投機勢力の所為なのだ。それ故に価格統制を通じて投機勢力を叩き、需要抑制さえすれば正常な不動産市場が回復・形成されると考えているのだ。

 果たしてこうした認識と、それに基づく政策対応は正しかったのか。日本同様に人口減少をしても、一人世帯の急増が住宅需要を支えているという、韓国社会の現実を無視していなかったか。つまり3~5人程度の家族世帯を前提とした住宅や不動産ではなく、一人世帯を前提とした住宅や不動産の需要は、投機ではなく実需ではないのか。

 韓国は先日2月4日の25回目の不動産政策においては、この間の政策と方針の大転換がなされ、不動産需要の高い地域を中心に再開発・再建築の許可、また容積率の緩和を骨子とした供給拡大策をまとめた。その細部については法的に問題点が山積している上に、既得権者との利害調整を巡って批判も多いのだが、市場メカニズムに基づいた需要と供給の均衡による正常な価格形成を目指す方向へと認識を転換したのであれば、また日本のバブル崩壊の原因認識と共に修正してくれれば、問題は無いだろう。

 しかしどうやら4月に実施されるソウル市長・釜山市長を中心とした再選挙・補欠選挙を前に、有権者らに不動産(マンション)所有の夢を一時的に見せて、選挙を乗り越えようとしている政治的戦術にしか見えないし、そう批判もされており、26回目以降の不動産政策が如何なるのか、予断を許さない。

 つまり日本のバブル崩壊も、韓国の不動産市場の高騰も、投機勢力なる陰謀論の所為にするのではなく、市場メカニズムに基づいた需要と供給の均衡による正常な価格形成や効率的な資源配分が政治によって妨げられてしまった、謂わば「国家の失敗」が原因であるとの認識への転換が望まれよう。そしてその事は日本や日韓関係についての正しい認識形成の一助ともなってほしい。
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